日本の古代史を知る上で欠かせない古事記と日本書紀。そもそも編纂された目的が違っています。
作られた目的が違う古事記と日本書紀!正しいのはどっち?
皇室の歴史を物語としてドラマチックにまとめた古事記は、国内向けに書かれたものと考えられています。宮中の娯楽用、または皇子の教育用に作られたという見方もあれば、皇室と各氏族の関係性を示すことで天皇中心の国家体制を確立しようとしたという見方もあります。
一方で、純粋な漢文で書かれた日本書紀は、中国をはじめとする国外に対して、日本という国家の存在をアピールする目的があったと考えられます。1つのエピソードに対して、いくつもの伝承や言い伝えが引用されているのは、たくさんの民族がいる連合国だと示したかったからかもしれません。
ちなみに、古事記が重要な歴史書として認識されるようになったのは江戸時代から。それまでは、先代旧事本紀という歴史書が日本最古とされていました。
江戸時代に本居宣長という研究家が古事記の価値を再発見したことで、ようやく日本最古の書として認められたのです。
古事記と日本書紀はどちらが正しいというものではありません。実際、神社で行っている神事のルーツをたどると、古事記と日本書紀の話が混在していたりもします。どちらかを否定すると、あらゆる地域の人たちが古来より大切にしてきた伝統や文化を否定することにもつながってしまいます。
古事記も日本書紀も、さらには地方の歴史を記した風土記なども、日本人のアイデンティティや価値観を知る重要な文献。
異なる言い伝えの背景にまで思いを馳せれば、より楽しみ方が広がりそうですよ。
堀田 尚宏(Hotta Naohiro)
八幡神社(岐阜県養老町)の神職さん。
2004年に阿智神社(岡山県倉敷市)に奉職以来、20年にわたり神職を務める。
日本国外で最古の歴史を持つハワイ島の『ヒロ大神宮』の7代目宮司。現在は神職と兼任して、実家が経営する業務用串カツメーカー『オグラフーヅ』の専務も務める二刀流。
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■谷口松雄堂ブログ編集担当より
神と紙にまつわるお話を、神職の方にお話いただけました。神社やお寺に参拝へ行くときに、知っておくとより楽しいお話をシリーズでお伝えします。
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