貴族から広まった月見の宴
旧暦8月15日の夜に、明るく輝く月を眺める「十五夜」の行事。十五夜とは満月の別名で、中秋の名月とも呼ばれます。
こうした月を愛でる習慣は中国から伝わったとされ、奈良・平安時代には、貴族たちが「月見の宴」を開催していたという記録が残っています。
秋の澄み渡った空に輝く月を眺めながら、管弦の演奏や和歌を詠むなど、優美な時間を楽しんだとされる貴族たち。江戸時代には、そんな月見の行事が庶民の間にも広まり、十五夜は五穀豊穣を祝う収穫祭へと発展していきます。
月の神様は「ツキ」も呼ぶ?
昔の人は、月の満ち欠けを見ておおよその月日を知り、農業や漁業に役立てていました。
そのため、十五夜の行事には、お月様への感謝の気持ちが込められていたと考えられます。
ツクヨミノミコトとアマテラスオオミカミ
また、月は太陽と同じく、昔から人々の信仰の対象の一つでもありました。
月を司る神様は「月読命(ツクヨミノミコト)」といい、太陽の女神「天照大神(アマテラスオオミカミ)」の弟にあたります。
太陽も月も、生活の営みに欠かせない大切な神様ですが、中でも月は、満月、新月、三日月、八日月など数多くの呼び名があることから、特別な神様として愛されていたのかもしれません。俳句などの世界では、中秋の名月だけでも、「今宵の月」「三五夜」「望月夜」など、いろいろな呼び方で月を表現しています。
夜空に輝くお月様は、太古の昔から、人々の心を癒してくれる特別な存在だったのでしょう。そのため、愛着を持って、たくさんの呼び名が生まれたのかもしれませんね。
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十五夜の夜に、すすきと秋の味覚、月見団子をお供えして祈れば、
月の神様がうれしい「ツキ」を運んできてくれるかもしれませんよ。
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堀田 尚宏(Hotta Naohiro)
八幡神社(岐阜県養老町)の神職さん。
2004年に阿智神社(岡山県倉敷市)に奉職以来、20年にわたり神職を務める。
日本国外で最古の歴史を持つハワイ島の『ヒロ大神宮』の7代目宮司。現在は神職と兼任して、実家が経営する業務用串カツメーカー『オグラフーヅ』の専務も務める二刀流。
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■谷口松雄堂ブログ編集担当より
神と紙にまつわるお話を、神職の方にお話いただけました。神社やお寺に参拝へ行くときに、知っておくとより楽しいお話をシリーズでお伝えします。
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