七五三が11月15日になったのは徳川幕府がきっかけ?
子どもの成長を喜び、さらなる成長を願って11月15日に神社を詣でる七五三。
この祝い行事が11月15日になった理由には、いくつかの説があります。
まずは、陰陽道を由来とする説。旧暦の11月15日は最上の吉日とされる「鬼宿日(きしゅくにち)」にあたり、何事をするにも良い日だとされます。鬼宿日とは、鬼が家にいて外を出歩かない日のこと。そこで、大切な子どもの祝いの日に選ばれたというわけです。
この鬼宿日に七五三の儀式を行ったと言われているのが、三代将軍・徳川家光です。息子の徳松(後の五代将軍・家綱)が体の弱い子どもであったため、縁起のいい11月15日を選んで祝いの儀式を行ったのだとか。それが庶民にも広まって、11月15日が七五三の祝いの日になったという説があります。
また、11月はもともと全国各地で収穫祭が行われる月でもあり、さらに旧暦の11月15日は毎年必ず満月になることから、収穫と子どもの成長の両方に感謝して、11月15日に祝いの行事が行われるようになったという説も。どれが正解なのかはわかりませんが、こうしためでたい事柄が重なって、11月15日が子どもの祝いの日となったのでしょうね。
千歳飴のルーツは江戸時代の商人?
ちなみに、七五三につきものの千歳飴のルーツにもいくつかの説があります。
有名なところでは、江戸時代の商人が紅白の棒状の飴を「千年飴」などという名で縁起物として売りはじめたことがきっかけという説。
他にも、大麦から作った神さまへのお供え物が起源だという説などもありますが、いずれも七五三の習わしというわけではありません。
そのため、千歳飴の準備がない神社もありますから、七五三詣での際には事前に確認するとよいでしょう。
とはいえ、神社にルーツがないとはいっても、日の出や富士山、鶴亀、松竹梅、「寿」の字など、『めでたづくし』の千歳飴の袋はやはり特別感があるものです。
お子様のハレの日を祝うとともに、この先、我が子の命が千歳万歳まで延びて、喜びに満ちた一生をおくれることを願って、ぜひ親子でおいしく召し上がってくださいね。
開運を願うなら近くの神社へ
ところで、七五三のお祝いで参拝する神社を、みなさんはどのように選ばれていますか?
パワースポットブームの影響もあって、近年は近くの神社ではなく、有名な神社まで足を伸ばされる方も増えています。どこの神さまも、子どもの成長を見守ってくれることに変わりはないでしょう。
ただ、忘れないでいてほしいのは、いつもそばで見守ってくれている地域の神さまのこと。いろいろな神さまとご縁を持つのは大賛成ですが、まずは氏神さまや近くの神社の神さまにご挨拶をしてからよその神社を参拝するほうが、お付き合いとして気持ちがいいものです。
人付き合いでも同じですよね?
お祝い事があったときにまず報告するのは、いつも近くで見守ってくれている人のはずです。
近くの人を大切にしながら、お付き合いの輪を広げていく。これが、開運の基本だと思います。
特に、お宮参りで子どもの誕生を報告した神さまには、引っ越しなどのやむを得ぬ事情がなければ、ぜひ成長の報告も忘れずにしてあげてほしいものです。「おかげさまでこんなに大きくなりました」とお伝えすれば、その神さまはきっと、これからもずっと子どもの成長を見守ってくれるはずですから。
堀田 尚宏(Hotta Naohiro)
八幡神社(岐阜県養老町)の神職さん。
2004年に阿智神社(岡山県倉敷市)に奉職以来、20年にわたり神職を務める。
日本国外で最古の歴史を持つハワイ島の『ヒロ大神宮』の7代目宮司。現在は神職と兼任して、実家が経営する業務用串カツメーカー『オグラフーヅ』の専務も務める二刀流。
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■谷口松雄堂ブログ編集担当より
神と紙にまつわるお話を、神職の方にお話いただけました。神社やお寺に参拝へ行くときに、知っておくとより楽しいお話をシリーズでお伝えします。
→→→これまでの「かみかみコラム」
・御朱印帳【全3回】
・「かみ」の雑学【全2回】
・人形(ひとがた)を使ったお祓い【全2回】
・ジブリ映画に鬼滅の刃...大ヒットアニメも参考にしたお面とは?
・盆踊りのお面は先祖の顔を隠すため?
・十五夜「奈良時代から…!」「月見団子の数…?」【全2回】
・七五三の儀式の話【全2回】