「かみ」と発音するもの
日本には「かみ」と発音するものがたくさんあります。
これらの「かみ」には、実は一つの共通点があります。
それは、「人にとって特別なもの」ということ。
女将(おかみ)、お上(おかみ)などは目上の存在に対して使われる言葉ですし、髪(かみ)の毛は遺髪を残す文化があったり、髪型で身分や職業がわかる時代があったりと、人を表すものとして大切にされてきました。
そして「噛み」にも、神さまへの捧げものとしての重要な役割が。古代の日本では、人が口の中で米を噛んで糖に変え、自然発酵させることでお酒を作っていました。
これを「口噛み酒」といいます。
そういえば、あの大ヒット映画に
お酒は昔から、神さまへの大切な捧げものの一つ。
2016年に大ヒットした映画「君の名は。」の作中でも、巫女の家系である主人公が、この口噛み酒を神さまへの捧げものとして作っていましたね。
日本酒を作ることを「醸す(かもす)」というのも、この口噛み酒の「噛む」が由来。
つまり「噛み」は、神さまを敬う気持ちと深い関係があるのです。
では、紙はどうでしょう?????
紙は、神さまと人をつなぐものとして重宝されてきました。
お供え物の下に敷くのも紙、
お祓いで使用する人形(ひとがた)も紙、
しめ縄や、祭祀で見られる「御幣(ごへい・みてぐら)」に付いた紙垂も紙です。
人と人の想いをつなぐツール
貴重な品を表す「幣」に、尊称の「御」を付けた「御幣」は、神さまに奉納するもの。
もともとは、竹や木でできた串に神聖な布を挟んでお供えしていましたが、時代を経るにつれ、紙で折られた紙垂が使われるようになっていきました。
そして紙垂の形も、地域や、それを捧げる神様、神社の解釈などによって変わります。
天照大神(アマテラスオオミカミ)への祈りにはこの形、恵比寿様へのお願いならこの形…といったように、モチーフを変えている神社もあるほどです。
紙垂の形に込められた想いはそれぞれですが、紙に祈りを込めるという点では同じです。
「かみ」と呼ばれるものの中でも、紙は神さまを敬う気持ちと深い関わりがあるもの。
考えてみれば紙は、手紙や千羽鶴のように、人と人の想いをつなぐツールとしても大切にされてきました。
*:.。..。.:+・゚ ゜゚・*:.。..。.:+・゚ ゜゚・*:.。..。.:+・゚ ゜゚・*:.。..。.:・*:.。..。.:+・゚*:.。..。.:+・゚
紙には、人が想いを込めたくなる特別な力があるのかもしれませんね。
*:.。..。.:+・゚ ゜゚・*:.。..。.:+・゚ ゜゚・*:.。..。.:+・゚ ゜゚・*:.。..。.:・*:.。..。.:+・゚*:.。..。.:+・゚
堀田 尚宏(Hotta Naohiro)
八幡神社(岐阜県養老町)の神職さん。
2004年に阿智神社(岡山県倉敷市)に奉職以来、20年にわたり神職を務める。
日本国外で最古の歴史を持つハワイ島の『ヒロ大神宮』の7代目宮司。現在は神職と兼任して、実家が経営する業務用串カツメーカー『オグラフーヅ』の専務も務める二刀流。
……………………………
■谷口松雄堂ブログ編集担当より
神と紙にまつわるお話を、神職の方にお話いただけました。神社やお寺に参拝へ行くときに、知っておくとより楽しいお話をシリーズでお伝えします。
御朱印帳
【第一回】平清盛も御朱印をもらっていた !?
【第二回】御朱印帳の紙は真っ白と茶色のどちらが正解?
【第三回】神社とお寺で御朱印帳は分けるべき?
「かみ」の雑学
【第一回】 髪、噛み、紙...、神さまと「かみ」の深い関係
【第二回】 紙垂のギザギザに込められた想い