平清盛も御朱印をもらっていた!?
神社仏閣を巡って御朱印を集める「朱印巡り」。パワースポット人気も相まって、ブームが続いていますね。
御朱印とは、神社やお寺を参拝した証としてもらえるもの。
神仏とのご縁の記録とも言い換えられるので、極楽浄土へのパスポートとして御朱印帳をお棺に入れる地域もあるそうです。
もともとは、写経したお経をお寺に納経することでもらえた御朱印ですが、今は納経をしなくてもいただけるお寺がほとんど。
では、日本最古と噂される御朱印をもらった人は誰だと思いますか?
実は、平家物語で有名な平清盛ではないかと言われています。
平安の昔は、「神仏習合(しんぶつしゅうごう)」という思想が広まった時代。神仏習合とは、平たく言うと「仏さまは、人々を救うために神さまという仮の姿で現れる」という考え方です。
この考えに影響を受けた平清盛が、「厳島神社の御祭神は、十一面観音さまが姿をお変えになったもの」として、書写した経典を厳島神社に奉納。
そのときにいただいた「納経受取の書付」が、御朱印の起源だという説があります。
神仏習合の歴史は大変長く、明治政府が1868年に「神仏分離令」を出すまで続きました。
つまり日本では、1000年以上にわたって、神さまも仏さまも信仰の対象として同じように祀られていたのです。
神社に仏像があったり、お寺に鳥居があったりするのは、この名残なのですね。
でも、考えてみれば日本人は、信仰に対してすごく柔軟。
現在でも、たとえば大晦日はお寺で除夜の鐘を聞き、翌日は神社で初詣をするといった方が少なくありません。
雑多な信仰、という意見もあるかもしれませんが、神と仏という異なる宗教文化が共存してこられたのは、柔軟な宗教観を持つ日本ならではともいえます。
ですから御朱印巡りでも、神社とお寺両方の御朱印を集めている方がたくさんいます。
御朱印はその名の通り、「赤いハンコ」のことを指しますが、そもそもハンコ自体が、ご縁の記録として活用されてきたもの。
239年に卑弥呼が魏から授かった親魏倭王の金印なども、同盟の証、つまりご縁の証として贈られたものでした。
神社やお寺の御朱印も、参拝された方とのご縁の証。それぞれの神社、お寺によって彫られている文字が違うので、御朱印をいただく際には、ぜひ、「何と書かれているのですか?」「どういう意味の言葉ですか?」などと質問してみるとよいですよ。
すると、その神社やお寺にまつわる伝承や、祀られている神さま、仏さまのお話などを話してくれるはずです。
御朱印をきっかけに、そうして神仏とのご縁を深めていただけたら嬉しいですね。
(行列ができていたり、忙しそうなときは声かけをお控えくださいね)
堀田 尚宏(Hotta Naohiro)
八幡神社(岐阜県養老町)の神職さん。
2004年に阿智神社(岡山県倉敷市)に奉職以来、20年にわたり神職を務める。
日本国外で最古の歴史を持つハワイ島の『ヒロ大神宮』の7代目宮司。現在は神職と兼任して、実家が経営する業務用串カツメーカー『オグラフーヅ』の専務も務める二刀流。
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■谷口松雄堂ブログ編集担当より
神と紙にまつわるお話を、神職の方にお話いただけました。神社やお寺に参拝へ行くときに、知っておくとより楽しいお話をシリーズでお伝えします。
【第一回】平清盛も御朱印をもらっていた !?
【第二回】御朱印帳の紙は真っ白と茶色のどちらが正解?
【第三回】神社とお寺で御朱印帳は分けるべき?